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レベニューマネジメントと
ダイナミックプライシング

OTAでの販売、マーケティングに関わっている方は、最近、レベニューマネージメント と ダイナミックプライシングという用語を よく耳にすると思います。この2つの用語は販売戦略の用語なのですが、混同されがちです。また、宿泊施設でも都市型とリゾート型では分析や運用がかなり違うことは知られていないなど、用語が独り歩きしている印象ですが、まず、概要を説明していきます。

比較:定義 レベニューマネジメントと
ダイナミックプライシング

レベニューマネジメントとダイナミックプライシングは混同されやすい用語ですのが、ごくごくシンプルに言うと以下の通りとなります。

レベニューマネジメント 収益を最大化するための総合的な販売戦略
ダイナミックプライシング 価格のコントロール

つまり、ダイナミックプライシングは、レベニューマネジメントの一要素ということになります。ただし、多くの場合で、レベニューマネジメントとほぼ同じ意味で利用されています。(ややこしいですね)

まず、次は「ダイナミックプライシング」の説明をします。レベニューマネジメントという用語については後述します。

価格戦略の要素 レベニューマネジメントとダイナミックプライシング

この2つの用語は、価格戦略の要素です。厳密にはレベニューマネジメントは一般的にダイナミックプライシングを内包しています。

最適な価格で、収益を改善させる施策

OTAや直販での販売の際に、最適な価格を適用し、宿泊施設の収益を改善させる施策ということになります。具体的には価格と稼働(販売数)を最適な状態に持っていくことと考えればいいでしょう。(実際に、適切にダイナミックプライシングを行えば、単価と稼働は確実にアップします。

ダイナミックプライシングで単価と稼働(収益)を改善する

ダイナミックプライシング 
取り巻く背景

時代の流れで、稼働(ニーズ)の分散がされやすくなっている

働き方や休暇の取り方が多様化し、平日のニーズも以前より高まりつつあります。夏休みに集中したニーズも、少子高齢化、地球温暖化もあってイベントなども秋にずれ込んできています。その流れの中で、宿泊業や観光業も平日や閑散期の旅行の需要を掘り起こすことが盛んになってきました。この需要を掘り起こすための動機づけの一つが平日や閑散期の「価格による施策」であるわけです。

1ダイナミックプライシング

簡単に言えば「ダイナミックプライシング」とは「状況によって価格が変わる値付け」と言えます。この「状況によってニーズが変わる」という性質のビジネスで用いられて収益を改善していきます。カテゴリー的には販売戦略であり、その中にある価格戦略の要素の一つです。

ダイナミックプライシングは、販売戦略の一要素

ダイナミックプライシングは、価格戦略の重要な要素です。マーケティングとは「宿の魅力を高め売りやすくすること」ですが、それに対してダイナミック・プライシングの役割は「その魅力を効率的に価格に変換して収益を最大化」ということになります。

宿泊施設のダイナミックプライシングとは 宿の価値を価格に変換すること

価格決定のノウハウが、売上、単価、稼働に直結する

価格決定とは、商品の価値を「価格」に変換するための準備と言えます。適切な価格は商品の価値、需要により変動します。もしその価格が適切であれば、多くの場合、利益を確保しながらよく売れるということがあります。。しかしこの価格設定を間違えれば「売れるものも売れない」という事態に陥ります。だからこそ「値付け」というのは難しいわけで、ダイナミックプライシングは「値付け」に合理的に行うノウハウが詰まっているということです。

市場=OTAで、その旅館やホテルが売れる価格を見つける

つまり、ダイナミックプライシングというのは、うまく販売するために価格面で最適解を出し、利益を出す手法と言えます。

旅館・リゾートホテルのダイナミックプライシング
旅館・リゾートホテルのダイナミックプライシング

誤解されがちな
ダイナミックプライシング

「ダイナミックプライシング=安売り」ではない

誤解されている方が多いのですが、ダイナミックプライシングとは「安売りして稼働を上げる」という意味ではありません。あくまでも目的は収益の改善ですので、売上や単価や稼働を睨みつつ、収益の改善のためにコントロールしていきます。(単価は上げることもダイナミック・プライシングの目的の一つです。)

おそらく誤解の大元は、都市型のホテル(ビジネスやシティホテル)では極端に価格を調整してるためだと思われます。

メモ:都市型とリゾート型のダイナミックプライシングやOTA販売戦略の違いをvol.2で取り上げる

旅館・リゾートホテルのレベニューマネジメント

ダイナミックプライシングの効果

簡潔に言えば「収益を改善」します。そのしくみは、単価と稼働の掛け算を最適化することと言えばいいでしょうか。

単価と稼働は本来、相反する要素

経済学の基本中の基本とも言えますが、一般的に商品の価格が上がれば販売数は下がり、価格を下げれば販売数は増えていきます。さらに売上は価格と販売数の掛け算です。 つまりダイナミックプライシングはこれらの仕組み「も」利用していきます。

ダイナミックプライシングが
利用されるビジネス

ダイナミックプライシングは、席に数に限りがあるが、日によって商品のニーズが変化するビジネス(航空業界やプロスポーツのチケット販売)で活用されつつあります。宿泊業界も類似したビジネスであり、「在庫に限りがあって、その価値は、その日のうちに消えてしまう」ビジネスです。また「固定費が大きい業種」でもあるため、機会損失が大きければ収益に与える影響はとても大きくなります。(だからこそ、レベニューマネジメントという手法が発達していったわけです)

単価と稼働を上げるダイナミックプライシング

効果1:ニーズの高いところで
単価を上げる=利益率のアップ

需要が高ければ、単価を上げることで、客または室あたりの利益率はアップします。しかし人気の日に高い価格設定をするということは、昔から日本の宿泊業界で行われてきたことです。旧来の手法とダイナミックプライシングは何が違うのでしょうか。

旧来の手法との違い。ダイナミックプライシングでは効果を最大化する仕組みがある

旧来の手法でも繁忙の度合いによって高価格に設定してきましたが、その値幅(価格のレンジ)は限りがありましたし、ニーズの変化に応じて効率的に動かすことは限定的でした。それに対して適切なダイナミックプライシングを行うことで、この効果を高めることができます。

効果2:販売機会を増やす
=機会損失を減らす

ダイナミックプライシングを運用していない旅館やホテル(特にリゾート型)が陥りがちなのは、繁忙期や繁忙日は満室、その逆に、平日は稼働率が低くなり機会損失(つまり売れない状態)が起こる状態です。この状態を宿泊業界は甘んじて受け入れてきたところがあるのですが、この「空いている状態」をできるだけ減らすために、価格を下げる調整して需要を掘りおこしていきます。

「価格は下げるだけ」ではない

価格を下げれば販売数が増えるといっても、価格を下げすぎたら収益はそれほど改善しません。なので、この単価と販売数を最適化するために様々な分析や判断のノウハウが必要です。これが案外落とし穴になっていて、仕組みもわからないまま価格調整しても結果がでないということにつながるわけです。

さらに平準化で販売機会と単価がアップしていく

ダイナミックプライシングを運用していくと「稼働の平準化」という効果も見えてきます。説明が長くなりそうなので、詳細は控えますが、ここらへんを含めて価格戦略について、何かコンテンツを追加しようと思います。

ここだけの話:ぶっちゃけ、
みんなわかってないかもしれない

ダイナミックプライシングで収益を改善すると言っても、仕組みを説明している方は少なく、多くのコンサルも理解してなかったりしてるんじゃないかと感じています。これらの仕組みを理解しないとダイナミックプライシングの運用は難しいとは思いますので、「ダイナミックプライシングやります」というセールストークにしかなってないのではないかと考えています。

リゾート型と都市型の
ダイナミックプライシングの違い

リゾート系宿泊施設(旅館、リゾートホテル、グランピング、ゲストハウス、民泊など)では、都市型宿泊施設とは違ったダイナミックプライシングの運用が必要です。

タイプによって違う宿泊施設の価格決定モデル

リゾート型の宿泊施設(旅館など)と都市型(シティホテル・ビジネスホテル)では、もはや別のビジネスと言えるほどの違いがあります。価格決定モデルも異なります。その理由は、予約までの期間(リードタイム)が異なること、そして都市型が機能面で比較されやすいのに対し、リゾート型は「ここに泊まりたい」という動機が強く、代替性が低い点にあります。

口コミや宿の魅力に対する、ユーザーの評価

リゾート型(旅館など)を利用目的は「非日常の体験」であり、大切な人と過ごす特別な時間を過ごすことです。そのため、口コミやその宿の魅力やコンセプトに対してユーザーは鋭敏な感覚を持っています。それに対して都市型(シティホテル・ビジネスホテル)の宿泊施設は、機能性を評価の中心として、リゾート型に比べれば「吟味して選ぶ」という傾向が低いといえます。これはユーザーにとっての適正価格が定量的に算出できず、感情や印象に左右されると考えています。

誤解:どんな宿でも効果がでるわけではない

(特にリゾートの場合)質や口コミが十分に高い状態であれば、ダイナミックプライシングで単価は自然と上がっていきます。もし十分な質、魅力や口コミがなければ効果は限定的となります。

旅館・リゾートホテルのダイナミックプライシング

2レベニューマネジメント

最近流行りの
「レベニューマネジメント」

レベニューマネジメントとは:
直訳では「資産管理」

近年の宿泊施設のマーケティングでは、レベニューマネジメントという用語を耳にするようになりました。しかしこのレベニューマネジメントを日本語にすると「資産管理」という意味になり、意味を知ると宿泊施設の予約販売とのつながりがピンとこないのではないでしょうか。

旅館・リゾートホテルのダイナミックプライシング

販売やマーケティングでの意味
レベニューマネジメント

マーケティングや販売戦略での用語としては 「在庫に限りがあり、需要が時間によって変動するビジネス(航空業界、宿泊業界など)で収益を最大化させる戦略」としています。

つまり、収益の最大化の手段として「価格や販売チャンネルなどを総合的に考えて販売すること」であり、その中に先述の「ダイナミックプライシング」があるといってよいでしょう。

目的:収益の最大化
手段:販売戦略、施策

用語を使い分けるには

もし価格を変動させるという意味に絞るならば「ダイナミックプライシング」を使うことをおすすめします。逆に「収益最大化のための総合的な販売戦略」という意味なら「レベニューマネジメント」を使うと明確になると思います。

レベニューマネジメント
についての知識

レベニューマネジメントについて前提となる知識や経緯をまとめました。

1978年、アメリカで航空業界の規制緩和(航空自由化)が実施され、多くの航空会社が自由に価格設定を行えるようになって生まれました。

飛行機の座席(搭乗券)は、その搭乗日までに売れなければ売上がゼロという性質があります。(他の製品や商品は在庫としてその日以外にも売ることができる)。そのような航空業界の事情や条件の中で、航空会社がどのように販売すれば収益を最大化できるかという視点で生み出された考え方、戦略です。

もともと航空会社はリース会社から航空機を購入またはリースして、必要な人材を雇用し、どれだけの利益を回収できるか。という視点でモノを考えています。

海外のホテルの場合、所有者が建物を運営会社にリースする。そして運営会社はその運営によって利益を上げるという形が主流です。つまり、ホテル経営も航空業界に類似するビジネスモデルです。

2つの業界のいう「収益性」は、座席や客室という資産から、どれだけ有効に販売するかに掛かっています。このような事情から「レベニューマネジメント=価格を変動させて収益」という意味として使われるようになったと考えています。

日本の旅館などでは伝統的に、その所有者自体が経営(運営)を行っていることが主流です。しかし、海外では建物の所有者と、経営や運営が分かれていることが多いという歴史的背景の違いがあります。

役割 主な内容 代表例
所有者(オーナー) 不動産を保有・投資 不動産投資ファンド、個人投資家、企業など
運営会社(オペレーター) ホテルの実務運営 マリオット、ヒルトン、アコー、ハイアットなど
ブランド(フランチャイザー) ブランド名と運営ノウハウ提供 上記運営会社がブランドも提供するケースが多い

最近、プリンスホテルが、自社所有の資産を投資ファンドに売却して、運営に特化していくという記事を読みました。つまり海外の経営スタイルに合わせたということになります。

海外では、所有者と運営会社は分かれている事が多く、施設の所有者は経営または運営会社などにリースして「家賃」で収益を上げます。そして経営または運営会社は、その建物(施設)を運営して宿泊客に「短期に又貸し(宿泊)」するような形で利益を上げます。ちなみにこの配分の基準となるのが「GOP」と呼ばれるものです。

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